異色の読書論/教養論として話題を呼び、世界30カ国で翻訳されベストセラーとなった『読んでいない本について堂々と語る方法』。本書がもつ奥行きの深さをあざやかに浮き彫りにする、気鋭の哲学者による論考を、PR誌「ちくま」11月号より掲載します。 権威とは、何だろうか?――僕がこの概念をしきりに気にするようになったのは、ピエール・バイヤールの『読んでいない本について堂々と語る方法』に衝撃を受けて以来だったか、それより前からだったか、思い出せない。ともかく僕の頭のなかで、権威の問題は、バイヤールのあの本と密に関係している。 僕は、「ちゃんとした」読書をせねば、という強迫観念を、バイヤールの本によって、ある程度は解消することができた。「読書の完璧主義」とでも言うべきものからの解放(しかし完璧な解放ではないのだが)。あらゆる読書は不完全である、そうでしかない……。そんなことは、わかっていたつもりである。
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