被疑者死亡で不起訴——。2009年10月26日に発生した「島根女子大生殺人事件」は、7年後、不透明な結末を迎え、真相究明は叶わなかった。なぜ警察の捜査は難航したのか。犯人が死亡した背景には何があったのか。事件発生時から現地取材をつづけるノンフィクションライターの小野一光氏が検証する。(「文藝春秋」2021年5月号より/全2回の2回目、前編から続く) 「11月の半ば過ぎに勤め先の会社から自分に電話があり、『警察が(Hさんの事件で)事情を聞きたいと言っているから、知っていることを全部話すように』と言われたんです。しかし、それからしばらく何の連絡もなかったのですが……」 Cさんが異変に気づいたのは12月の初旬に入ってからだった。 「車で移動していると、いつも同じ車が目に付くようになったのです。10日間くらい連続で同じ車と遭遇しています。こちらがスピードを落とすとあちらの車も減速するし、飛ばしたら