「TAMはどの程度だとよいのか」と聞いてくれる起業家が時々いる。TAMとは「Total Addressable Market」の略で獲得可能な最大の市場規模、つまり商品・サービスの総需要のことだ。この10年で急速に浸透した起業家と投資家の共通キーワードだ。サービスや会社が、どの程度まで成長するかを決める要素のひとつである。将来の売り上げ規模が50億円か1兆円なのか、天井の高さを表す数字とも言
カルロス・ゴーン日産自動車元会長の捜査の行方はいまだ判然としないが、漏れ伝わる話を聞くたび、ある講演を思い出す。稲盛和夫氏が2007年5月に東京証券取引所で登壇したときのものだ。聴衆は、東証マザーズに上場していた経営者たち。 前年の06年、急成長企業ライブドアの粉飾が事件化し、時代の寵児、堀江貴文社長(当時)の逮捕へと発展した。株式市場は揺れに揺れた。そのライブドアの上場廃止を最終的に決断したのが、東証社長を務めていた西室泰三氏だった。 東芝の社長・会長を歴任し、世を去るまで隠然たる影響力を持ち続けた「東芝の妖怪」は、市場混乱の沈静化に奔走する。そんな西室氏が一息ついた07年に企画したのが、稲盛氏の講演会だった。 演題は「なぜ経営に哲学が必要なのか」。業績と株価に関する無数の数字がうごめく証券取引所で、哲学をテーマにした講演会が開かれたことは興味深い。 稲盛氏を招いた西室氏の真意は定かでは
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