Liz Wells(ed.): Photography −A Critical Introduction−, Chapter 1., Contemporary debates (リズ・ウェルズ編、『写真−批判的入門−』第1章から「現代の論争」) 〔紹介〕 本書は、そのタイトルから分かるように、写真についての批判的入門書である。ただし、何が「批判的」なのか? それは、写真研究と聞けば、すぐさま感情移入的な作家論や撮影技術のみの解説を連想してしまう人々の態度に向けられている。ウェルズはこう言う。 「なぜ理論を研究するのだろうか? 理論は実践に浸透するのである。ここには本質的に2つの選択肢が存在している。一方は理論的な論争を無視し、イメージが意味をもつようになる諸側面を考慮せずに、それで批判的な理解を限られたものにしてしまうという選択肢、さらに言えば、その当人が写真家であ