ここ福山は瀬戸内海の真ん中辺り、大阪と九州方面から満ちの潮がぶつかるところで、これが引きの潮とも成りますと正反対にそれぞれの方向に逆戻りするのですから、ここはまさに真ん中近辺なのでございます。 この真ん中近辺といいますのは案外厄介なもので、海水の循環が上手くありません。 つまり暖かな海水があまり入ってこないのですから、海水温が上がらない。それに連れて魚の活性も上がらないと成るのですから、釣り師は頭を抱えることとなるのです。 魚の食いが悪い季節の釣り師はさぞかし陸に上がった河童だろうと思われるのでしょうが、これがどうしてこと釣りに関してはめげるものではございません。 ある者は道具の手入れや仕掛けの算段、ある者は不足のものなどの準備などと忙しく立ち回るものでございます。余った時間など不足の無いところで新しい着想で釣りを企てる者など、あらぬところに顔を出したり、怪しげな占いの本を読みふけったりと