→紀伊國屋ウェブストアで購入 校長先生の自転車をくせ毛の細身の少年が懸命にこいでいる。荷台には、小柄な少年が顔を空に向け、目をつむって両手を広げている。右手には、チョークの箱を持っている。こいでいるのが、本書のおもな語り部であるイカル、荷台にいるのが俳優志望の漁師の子で、後に有名な多国籍企業のITマネージャーになるが、それでも俳優になる夢をあきらめないシャダン、最後の節の語り部でもある。表紙を飾るこれらの少年たちが、本書の主人公「虹の少年たち」10人+のうちの2人である。 「小説の舞台はスハルト大統領による独裁政権が続く一九八〇年代、インドネシアはスマトラ島の南沖にあるブリトゥンという小さな島だ。天然資源に恵まれたこの島で、国営の開発公社は錫を掘削し莫大な利益を挙げていた。しかしその利益が全島民に行き渡ることはなかった。校舎は傾き、教師たちはほぼ無給、制服すらない貧しい学校から物語は始まる