人類のグローバリゼーションは海の道と草原の道を結んだクビライ治下のモンゴル世界帝国で最初のピークを迎えた、と一般には考えられているが、モンゴル帝国の創始者・チンギス・カンについては意外とその治績が知られていない。本書は、長年モンゴルで発掘を続けてきた考古学者が描く等身大のチンギス像である。 遊牧民は放浪するのではなく、ある程度決まった場所を1年かけて季節移動する。「千戸制」を基本とする人々の集まりをモンゴル語ではウルスと呼ぶが、ウルスは季節移動する固有の領域を持っていた。人と土地のウルスを結ぶのがジャムチ(駅伝制)だ。これがモンゴルの国制の基本的な仕組みである。そして、ジャムチ制を巧く機能させるためには、治安が保たれていることが前提となるのだ。 著者が発掘したアウラガ遺跡は、今日ではチンギスの都跡(ヘルレン大オルド)であったことがほぼ確実視されているが、宮殿は思いのほか小さく質素で商店もそ
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