辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。 変なタイトルを付けたが、痴漢行為について、法律的な解説をしたいわけではない。 『日本国語大辞典(日国)』で「痴漢」を引いてみると、以下のような2つの意味がある。 (1)愚かな男。ばかもの。たわけもの。 (2)女性にみだらな行為をする男。 「痴」はおろか、「漢」は男という意味で、「痴漢」という語は、本来は(1)の意味で使われていた。それがのちに(2)のような、女性に淫らな行為を働く男や、そのような行為をいうようになった。その意味がいつ頃から広まったのかという話をしたいのである。 なぜそのようなことを考えたのかというと、NHK Eテレの番組の某ディレクターさんからこんな話を聞いたからだ。彼は、「痴漢」という語が(2)の意味で使われるようになったのには、作家の大江
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