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ブックマーク / www.bungei.shueisha.co.jp (11)

  • 第31回:異文化の壁にぶち当たった時 | 集英社 文芸ステーション

    文化受容、多文化共生を! と叫ばれて久しいが、むしろ世界は、というか世間・生活空間・ネット領域では、そういった意識高い系文化フレグランスへの反発に由来する、アンチ異文化ムーヴが激しさを増している。在日ドイツ人たる私も、実際、ふたつの文化の懸け橋という以上に両文化の板挟みに遭って双方を呪う展開が多い。おお、我は求め訴えたり! そんな私が選ぶ「闇黒ぶりが活力となる!」異文化遭遇、まずはフィリップ・K・ディックの『高い城の男』だ。ナチスドイツが世界制覇に王手をかけ、友邦たる日に核攻撃を仕掛ける5分前の世界を描くという時点でもうすでにネガティブ極まりないが、書のキモは「ナチス」の政治的狂気以上に、「ドイツ」の文化的狂気に踏み込んでしまった点だ。ヨーロッパの伝統哲学的な理性が人間のスペックを超えてなお人間を支配することで生じるヤバみ。

    第31回:異文化の壁にぶち当たった時 | 集英社 文芸ステーション
  • 第36回小説すばる新人賞受賞作『我拶もん』刊行記念対談 神尾水無子×柳家喬太郎「小説と落語が交わるところ」 | 集英社 文芸ステーション

    落語と出会わなければ時代小説を書くことはなかった。 そう語るのは、陸ろく尺しゃくと呼ばれる江戸時代の駕か籠ご舁かきを主人公にした『我が拶さつもん』で、第36回小説すばる新人賞を受賞した神尾水無子さん。 このたび、受賞作の刊行を記念して、神尾さんが大ファンだという柳家喬太郎師匠との対談が実現! 「小説」と「落語」。 表現方法の異なるお二人に、創作についてのお考えをたっぷり伺いました。 ――神尾さんは喬太郎師匠の大ファンだそうですね。 神尾 師匠が創作された『ハンバーグができるまで(※)』や『午後の保健室』が大好きなんです。『午後の保健室』のどんでん返しのあざやかさには当に圧倒されました。 ※舞台化もされた喬太郎師匠の人気創作落語。離婚し、普段の夕は惣菜や弁当で済ませているマモル。そんな彼が突然、合い挽き肉、タマネギ、大嫌いなニンジンなどを買いに来たから商店街の店主たちは大騒ぎ。寂しさ

    第36回小説すばる新人賞受賞作『我拶もん』刊行記念対談 神尾水無子×柳家喬太郎「小説と落語が交わるところ」 | 集英社 文芸ステーション
  • 第13回 額賀澪さん(作家)が内田良さん(教育学者)に会いに行く【前編】 | 集英社 文芸ステーション

    数々の青春小説を執筆し、近年は中学受験の問題に相次いで著作が使用されていることから、中学受験の新女王とも呼ばれる作家・額賀澪さん。しかし、学校のことを知るほどに、部活についての疑問が湧き上がってきたそうです。 今回その疑問を解決するため、名古屋大学で教員の過労問題や体罰について研究を行っている、教育学者・内田良さんに会いに行きました。額賀さんにとって初めての児童書となった『ラベンダーとソプラノ』(岩崎書店)を引き合いに、学校の部活について語り尽くします。 撮影/大槻志穂 構成/編集部 (2023年12月15日 神保町にて収録) 額賀 早速ですが、実は最近困っていることがありまして……。私、若い子を主人公にした小説を結構書くんです。それで、高校生を主人公にすると当然学校が出てきて、部活がメインの題材になったりもするんですけれど、十年くらい前にデビューしたときは、自分が高校生だった頃の感覚で素

    第13回 額賀澪さん(作家)が内田良さん(教育学者)に会いに行く【前編】 | 集英社 文芸ステーション
  • 第11回 上田岳弘さん(作家)が波多野裕文さん(ミュージシャン)に会いに行く【前編】 | 集英社 文芸ステーション

    新作長編『最愛の』を刊行したばかりの小説家の上田さんと、数ヶ月前に新譜『Camera Obscura』をリリースしたPeople In The Boxの波多野さん。上田さんの芥川賞受賞作「ニムロッド」がPeople In The Boxの「ニムロッド」からインスピレーションを受けていたことから対談で知り合い、その後東京と香川という距離がありながらも、折に触れて会うように。 今回、お互いがコロナ禍の期間に制作していた作品を発表したということで、上田さんは、普段は面と向かってなかなか話さない「創作についての話」がしたいと、波多野さんに声をかけました。このパンデミックの数年、二人の創作者は何を考え、作品は、創作の姿勢は、どう変化したのでしょうか――。 撮影/神ノ川智早 構成/編集部 (2023年8月10日 収録) 上田 People In The Box、約3年半ぶりにアルバムが出ましたね。僕も

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  • 第20回:世間から浮いているなと思った時 | 集英社 文芸ステーション

    ふと気づくと世間から浮いている。私が古代ギリシャ人になっているからだ。 四六時中古代ギリシャ人の書いたものを読み、語り、再現などしているので、頭の中で常に彼らと過ごすことになる。 すると、日常生活でも 「それは古代ギリシャ人ならこうするのに」 「正装で来いと言われたので月桂冠を被ってきただけですが?」 「おのれ、神々の怒りを畏れぬ現代人どもめが!」 などと思考が古代ギリシャ人に乗っ取られて、浮く。

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  • 第8回 松田青子さん(作家)が、チョン・ソヨンさん(SF作家)に会いに行く【後編】 | 集英社 文芸ステーション

    近年注目の韓国SF小説の翻訳出版が相次ぎ、キム・チョヨプ『わたしたちが光の速さで進めないなら』、 チョン・ソンラン『千個の青』、ぺ・ミョンフン『タワー』などなど経済格差、気候変動、障がい者問題などさまざまな社会問題を掘り下げる問題作が日の読者を魅了してきました。 その魅力の根源には何があるのか。 韓国SFをけん引してきた『となりのヨンヒさん』の著者チョン・ソヨンさんに、日の作家・翻訳家の松田青子さんが質問を投げかけます。 撮影/神ノ川智早 構成/すんみ 通訳/李希京 (2023年4月15日 神保町にて収録) 松田 『となりのヨンヒさん』を読んでいると、特に社会という大きなシステムに抗いながら生きている人の姿が心を打ちます。 例えば、「一度の飛行」ではテスト飛行で訪れた開拓惑星から帰らずに、違う生き方を選択した登場人物が描かれ、「開花」は危険分子として刑務所に投獄されてしまった姉が、検閲

    第8回 松田青子さん(作家)が、チョン・ソヨンさん(SF作家)に会いに行く【後編】 | 集英社 文芸ステーション
  • 第7回 永井玲衣さん(哲学研究者)が、最果タヒさん(詩人)に会いに行く | 集英社 文芸ステーション

    雑誌「青春と読書」の連載エッセイ「問いはかくれている」で、流行語に隠された問いの考察を展開する哲学研究者の永井玲衣さん。 今回会ってみたいと願ったのは、自著の『水中の哲学者たち』に帯文を寄せてくれた詩人の最果タヒさん。 詩人の言葉に最も心惹かれるという永井さんが、言葉と速度の関係や、詩の言葉と日常で不意に口からまろび出る鮮烈な言葉との違いなど、最果さんとともに言葉の深遠さに迫りました。 撮影/江原隆司 構成/綿貫あかね (2023年2月14日 オンラインにて収録) 永井 最果さん、私の著書『水中の哲学者たち』に帯文を寄せていただき、ありがとうございます。「もしかして。あなたがそこにいることはこんなにも美しいと、伝えるのが、哲学ですか?」とに言葉の宛先を向けてくださり、とても嬉しかったです。今回初めてお話しするのが楽しみでした。 最果 ありがとうございます。最初、こののテーマが「話すとい

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  • 『十三夜の焰』刊行記念インタビュー  月村了衛「江戸から令和に連なる腐敗の構造をえぐり出す」 | 集英社 文芸ステーション

    十三夜の月の下、運命的な出会いを果たした二人の若者。 江戸の市中見回りを担う御先手組の幣原しではら喬きょう十じゅう郎ろうと、盗人一味の新顔である千吉せんきち。 やがて二人は数奇な運命に導かれ、千吉が両替商・銀字屋利兵衛ぎんじやりへえと名を変えた後も、くり返し相まみえることになります。 ある時は仇敵同士として、またある時は友として─―。 月村了衛さんの小説すばる連載をまとめた新刊『十三夜の焰ほむら』は、幕府の金融政策にまつわるさまざまな事件を背景に、 時代に翻弄された二人の男の人生を約五十年にわたって描く時代小説です。 時代ミステリの面白さと人情ものの味わいが融合した新作について、月村さんにうかがいました。 取材・構成/朝宮運河 写真/織田桂子 ─―『十三夜の焰』は小説すばる連載(二〇二一年十一月号~二〇二二年六月号)を単行化したものです。二〇一八年刊行の『コルトM1847羽衣』以来、時代

    『十三夜の焰』刊行記念インタビュー  月村了衛「江戸から令和に連なる腐敗の構造をえぐり出す」 | 集英社 文芸ステーション
  • 古谷田奈月『フィールダー』刊行記念インタビュー「誰もが当事者である世界線で、『リアル』とは何かを問う」 | 集英社 文芸ステーション

    古谷田奈月『フィールダー』刊行記念インタビュー「誰もが当事者である世界線で、『リアル』とは何かを問う」 3年ぶりの新刊『フィールダー』を発表し、その読書体験の衝撃が早くも話題騒然となっている古谷田奈月氏。書を執筆するにいたった背景や、込められた思いを聞いた――。 「初めに書こうと思ったのは、動物に関する話だったんです。ペットを飼うことに対する疑問、すなわち、なぜ人は動物を飼ってもいいと思っているのか。例えば、使役動物や家畜のように、人間が自分たちの利益や生活のために利用している動物の存在については納得できるんです。都合よく搾取しているということではあるけれど、生きるためにやっていることだから。でも愛玩動物に関しては、根底にあるのは『かわいいものを近くに置いておきたい』という利己的な欲望です。そこに伴う残酷さや暴力性をはっきりと自覚しているというならわかりますが、すすんで動物を飼っている人

    古谷田奈月『フィールダー』刊行記念インタビュー「誰もが当事者である世界線で、『リアル』とは何かを問う」 | 集英社 文芸ステーション
  • 大鶴義丹×金守珍 『女優』刊行記念対談「女優という生きもの」 | 集英社 文芸ステーション

    俳優、映画監督、コラムニストなど多方面で活躍する大鶴義丹氏が、ほぼ十年ぶりに上梓した小説のタイトルは『女優』。内容からも、昨年亡くなった母、女優の李麗仙氏を想い起こす読者がいるかもしれない。大鶴氏の父親である唐十郎氏が旗揚げした〈状況劇場〉にかつて在籍し、李氏とも交流が深く、唐氏の戯曲の演出に多くかかわってきた演出家・俳優・映画監督の金守珍氏が、『女優』創作の背景、演劇と舞台芸術について大鶴氏と語り合う。 構成/すばる編集部 撮影/中野義樹 金 いやー、面白かった。びっくりしたよ、義丹が小説家だっていうの、すっかり忘れてた。文体もしっかりしているしテンポがいいから、すぐ読めちゃった。 大鶴 を出したのは十年ぶりなんです。 金 出だしがすごくいいよね。「有名女優の子供になることは、有名女優になることより難しい」 大鶴 確率として。女優は子どもを持たない人も多いから。 すばる文学賞でデビュー

    大鶴義丹×金守珍 『女優』刊行記念対談「女優という生きもの」 | 集英社 文芸ステーション
  • 100年後の「本」|集英社 WEB文芸 RENZABURO レンザブロー

    哲学者プラトンの『パイドロス』に、こんな話が出てくる。エジプトの古い神テウトは、算術や幾何学、天文学、将棋、双六、そして文字を発明した。あるときテウトは、エジプト全土に君臨していた王様の神タモスのところに行き、自分の持つさまざまな技術披露した。テウトは文字についてもタモスに説明する(『パイドロス』藤沢令夫訳、岩波書店版より)。 王様、この文字というものを学べば、エジプト人たちの知恵はたかまり、もの覚えはよくなるでしょう。私の発見したのは、記憶と知恵の秘訣なのですから。 ところがタモスは、このことばを咎めた。 たぐいなき技術の主テウトよ、技術上の事柄を生み出す力をもった人と、生み出された技術がそれを使う人々にどのような害をあたえ、どのような益をもたらすかを判別する力をもった人とは、別の者なのだ。いまもあなたは、文字の生みの親として、愛情にほだされ、文字が実際にもっている効能と正反対のこと

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