1994年に井上礼之会長が社長に就任した当時、ダイキン工業は売上高4000億円弱の中堅企業だった。就任以来、事業の選択と集中を進め、米グッドマンをはじめ、3000億円前後の大型買収を重ねることで現在は売上高2・5兆円弱と空調機器の世界最大手へと飛躍した。大胆な意思決定が迫られる今の経営者に求められる心構えについて聞いた。 スピード経営、買収は例外 ―“失われた20年”と呼ばれる経済の停滞期に会社を飛躍させました。 「ベルリンの壁が崩壊し、日本企業がグローバル化への対応を求められるようになった。またバブルがはじけ、日本的経営の特徴である終身雇用も崩れた。ただ、悪いときに企業は変わる。私の社長就任時、会社は17年ぶりに赤字転落した。だからこそ、ロボットや医療などから撤退し、空調事業に集中するなど経営改革が進んだ面もあった」 ―一方、買収が必ずしも良い結果に結びつくとは限りません。成功には何が必