帰り道、遮断機越しにウンコの話をすれば誰とでも友達になれる気がした。学校や新幹線のトイレで躊躇なく排便できるようになるたびに、ワンランク上の人間になれた気がした。だから「私はウンチしないよ!」と80年代女性アイドルのごとき発言を繰り返す妻が、どのように人間関係を築き、何をもって人間として向上しているのか、僕には見当もつかない。結婚8年目、いまだに僕は、妻が排便した確固たる証拠、「便器の汚れ」や「鼻を突くきっつーな異臭」を確認できていない。一度として。仮に8年ものあいだ溜めこんでいるのなら見た目はほぼ「ウンコマン」になるはずだが、外見的に排便的な要素は一ミリも見受けられない。排便の証拠ナシ、「ウンコマン」、ポリティカル・コレクトネスに配慮した呼び名にすると「ウンコパーソン」への変身も確認できない。これらの状況証拠からみて、妻は自宅ではないどこか約束の場所でなさっている、としか考えられない。納