約7年の難工事を経て完成した黒部ダム。現在では観光地としても人気を集めている=富山県立山町(井上浩平撮影) 黒部ダムの黒部川第四発電所=くろよん(富山県)は来年で完成から60年となる。戦後、関西の電力不足を解消するため多くの犠牲者を出しながら成し遂げられた大工事。今夏の電力需給逼迫(ひっぱく)が懸念される中、現在も水力発電を続ける現地を取材すると、電力確保に情熱を燃やした先人の苦労とともに、既存施設の効率的な利用の観点からも原子力発電の有用性がみえてきた。 黒部ダムは標高1470メートルの中部山岳国立公園内にあり、一般の乗用車で直接訪れることはできない。日本海側のふもとにあたる宇奈月駅(同県黒部市)から、トロッコ電車で知られる黒部峡谷鉄道に乗り込みダムを目指した。 トロッコは宇奈月-欅平(けやきだいら)間の山間部約20キロを1時間半かけて結ぶ。「もともとは観光用でなく、黒部川流域の発電所を