京都を知っていた 2018.05.25 更新 子供のころ、ひどい赤面症だった。そのうえ軽い吃音や声の震えもあり、授業中に朗読の順番が回ってくるのがとても恐ろしかった。真っ赤になって言葉を詰まらせていると変な目で見られ、笑われた。人と向かい合うと全身から汗が噴き出し、気軽におしゃべりすることもできない。誘いを断るにも言葉が必要だから、たいてい「うん」の一言で済ませていた。 小学校五年生のとき、こんな私でも人と交流できる道を見つけた。 手紙である。学習教材の片隅に文通相手を探すコーナーができたのだ。 胸が高鳴った。手紙なら、相手を目の前にして話さなくてよいのなら、いける。「文通」は私のためにあると思った。 ひとりずつじっくり目を通していくと、ある女の子の自己紹介が目に留まった。 「いらないものを交換しませんか」 京都市北区に住む同い年のチカちゃんという子だ。 好きなアイドルや趣味を堂々と宣言す