なくした1万円を捜すのに5万円をかける人がいるだろうか。昔はいた。南北朝の争乱を描いた太平記に登場する青砥左衛門という武士。銭10文を川に落としたが、辺りは真っ暗。50文分の松明を買い込みついに捜し出した▼現代流に言えば、どこか前原誠司国交相に似ている。ムダな公共事業の象徴としてやり玉に挙げた八ツ場ダム。総事業費4600億円のうち既に3200億円を投入、7割方完成している。「もったいない」と普通は考えるだろう▼ただ、このダムの経緯は複雑だ。計画されたのは、今から50年以上も前の1952年。首都圏の治水、利水対策として反対を押し切って建設が進められたが、完成が延び延びになり、やっとのことで今の状態にこぎ着けた▼問題は当初もくろんだ効用が薄れていることだ。水需要は横ばい、治水面でも河川改修が進んだ結果、洪水の危険性は低くなっているという。民主党の言う「時代に合わない大型直轄事業の見直し」にピタ