現代思想の専門家で、批評家・作家の東浩紀氏がソーカル事件で現代人文思想が風評被害に晒されていると嘆いているらしい*1。風評被害と言う所がひっかかった。物理学の比喩をハッタリで使っていたデリダの研究者である東氏からすると、重度に意味不明な文章を書いていたラカンと一緒にされるのが嫌なようだ*2が、同罪に思える。東氏の姿勢にソーカルが批判していた部分が見え隠れするからだ。 1. 数学・科学用語を濫用するポストモダンな現代思想家 ソーカル事件からおさらいしておこう。1994年にアラン・ソーカルが数学・科学用語をデタラメに使った論文を作成し、著名評論誌にそれを送ったところ掲載されてしまい、ソーカル自身は数学・科学用語の使い方が間違っている事しか指摘していないが、現代思想のデタラメさが露見した事件である。ソーカルが書いた『「知」の欺瞞』を見ると、ドゥールズ、デリダ、ガタリ、イリガライ、ラカン・・・とポ