福島第⼀原⼦⼒発電所事故後に始まった当時18歳以下の福島県民の甲状腺検診で,予想を数⼗倍上回る甲状腺がんが検出された。そして今年,事故を起こした東京電力を相手に東京地裁に訴訟が提起された。原告は事故当時6歳から16歳の甲状腺がん患者である。 この訴訟について因果関係⽴証の困難さを指摘する声もあるが,環境保健で因果関係を専⾨とする者にとっては,科学的因果関係の⽴証がこれほどシンプルな事例は珍しい。過去の医学研究の知見,発がん物質の知識,エビデンスなどが揃っている。通常の数⼗倍という多発は福島県の県民健康調査検討委員会(検討委員会)も認めており誰も疑っていない。チェルノブイリ原発事故後も著しく多発した⼩児甲状腺がんは,放射性ヨウ素への被ばくが唯一の原因として知られ,放射性ヨウ素への被ばくで小児甲状腺がんは多発する。今回の過酷事故では広範囲に放射性物質が拡散し,自然に存在しない核種が⾸都圏から西