「まえがき」も「あとがき」もない不思議な本だ。だからどうしてこの本が作られたかはよく分からない。 『吾輩は童貞(まだ)である』(キノブックス)。「童貞について作家の語ること」という副題がついている。そこから中身は想像できる。22人の作家や詩人が「童貞」に関して書いた一文をアンソロジーとしてまとめたものだ。 文豪はもちろん気鋭の若手も登場 さまざまな作品が取り上げられている。筒井康隆「現代語裏辞典」、中島らも「性の地動説」、原田宗典「夜を走るエッチ約一名」、小谷野敦「童貞放浪記」、みうらじゅん「東京アパートメントブルース」、横尾忠則「コブナ少年(抄)」、澁澤龍彦「体験嫌い」・・・。このあたりを見ると、うーん、だいたいその関係の人たちね、と何となく納得してしまうかもしれない。 一方で、武者小路実篤 「お目出たき人(抄)」、森鴎外「青年(抄)」、室生犀星「童貞」、三島由紀夫「童貞は一刻も早く捨て