死ぬのがこわい、できれば死にたくないという人も、では永遠に死なないのがいいのかときかれれば即座に、それもごめんだと答えるのではないか。日々の暮らしの中で不意に襲ってくるタイプの死の恐怖、それについて語られたものをみると、「永遠に」だとか「無限の時にわたって」だとか、そういう時間的な観念もまた、激しい恐怖の一因をなしている。子供のころ読んだ水木しげるの漫画(だったと思うが違うかもしれない)に、何かの理由で死ねなくなった人間が四肢をばらばらに切断されて、でも死ねないので、頭は頭、腕は腕、脚は脚、それぞれの部位が、それぞれのスタイルで、永遠に「痛いよう、痛いよう」と嘆き続けるというのがあって、いやな気分になった。ほかにも不死の不幸について語る小説、随筆など、よくある。しかし、だから死ぬのは幸せなのだともならないのだから、難儀である。 死ねないのは不幸だ、ゆえに死ぬのは幸福だというのは理屈だが、死