とにかく、この島を出て行きたかった。そんな風に感じていたのも、もう七年前の話だ。 そのころの僕は、島の四方を取り囲む海を美しいと思ったことなんてなくて、 どちらかと言えばそれをまるで自分を閉じ込める牢獄のように感じていたように思う。高くそびえる青い絶壁。 いや、ほんとうのことを言えば、波や風、それらに弾き返される光の奔流に、心を奪われることがなかったとはいえない。 それでも、僕はそうした美しさに価値を見出してはいなかったのだ。海や山の美しさというのは、とても寂しいものだ。 そこから弾き出される自分を意識せずにはおれないからだ。 あれから少しだけ歳をとって、「自分」なんていう益体もない意識も少しだけ弱まってくれて、ようやく僕は手放しで海を美しいと思えるようになった。 今はそのことがうれしい。