他人によるものの多くはお金を払えば買うことができる。ただ、買えないものもある。何か。親切である。 人は誰しも一人で生きているわけではないから、他人がつくったものや他人の行為のおかげで生きていくことができる。食べるもの、住んでる家、歩いてる道、乗ってる電車、読んでる本、何でもいい、自分じゃない誰かがつくったものに囲まれて人生は進んでいく。 何かを買うということは取引である。親切にするということは贈与である。そして、取引は贈与ではない。だから、定義上、親切は買えない。そして、当たり前だが、親切は売れない。だから、これも当然なのだが、ほっておくと社会のなかで売り物はどんどん増えていくが、親切は勝手には増えず、むしろ減っていく。親切には対価がないからだ。(いい人が稀少生物のように見られる理由がここにある。対価がないのに親切を繰り出す人は普通ではないからだ。) エジプトでおなかを壊し、地下鉄で思いっ