ちょうど日本に、メジャーなサブスクリプション・サービス(AppleMusic)がやってきた2015年のあの時期を起点として、実を言って私はリスナーとしてある種の虚脱状態に陥っていました。かさばるジュエルケースのなかにあるCDという銀盤、ローティーンの頃から人生におけるかなりの労力と時間を賭して収集してきたそれは、今や自分の以外の誰もがアクセスできてしまう〈データ〉に成り下がったのでした(私のような人間にとって、サブスクリプション・サービスというのは初め、そうやって個人が収集してきた〈秘匿〉が暴かれたような気分にさせるものとして現れました)。 一方で同じ時期、それへの反動として、アナログ媒体たるヴァイナルへの人気がピークを迎えつつあり、かねてより並行してヴァイナルを蒐集していた私も少なからず歩調を合わせようとしてみたりもしたし、一定の愉しさも味わったのでした。また同時に、数々の〈新しい音楽〉