やさしさは親切とは違う。それぞれの反対を考えてみればいい。親切の反対は不親切、やさしさの反対は厳しさだろう。不親切はどんな場合もいいこととは言えないが、厳しさは常に悪いとは言えない。ときには厳しくすることが親切であることもある。 ところで人は常に正しくあらねばならない。何が正しいかはよく分からない場合も、何が正しくないかはおおむねはっきりしている。弱い者いじめや動物虐待は正しくない。その理由づけは人によってさまざまに違っても、それが正しくないことははっきりしている。 やさしさは正しさ(義しさ)とは違う。正しさだけを求める態度はやさしいとは言えない。ときには正しさの要求を緩めて、やさしさを発揮することが求められるとすれば、やさしさは少なくとも部分的に正しさに反する要求をもつことになるが、それでも、なにゆえに正しさだけでは不十分で、やさしさをも必要とされるのであろうか? それは、人が不完全で、