野口雅弘『官僚制批判の論理と心理──デモクラシーの友と敵』(中公新書、2011年) ・エリート官僚の不祥事、「脱官僚」政治=政治主導のスローガン…「官僚」への世評は芳しくない。しかし、現代社会の複雑な統治機構において「官僚」が不可欠なのも事実である。官僚制に対する反感は、直感的には分からないでもないにせよ、それはあくまでも心情レベルのものにとどまっている限り、実際の政治課題遂行に支障を来たす困難に直面する。こうした官僚制をめぐる議論はどのようにして仕切り直しが可能であろうか。 ・本書はウェーバーをはじめミヘルス、トクヴィル、カフカ、シュミット、アレント、ハーバーマスなどの論者が「官僚制」についてどのように議論を展開してきたのかを確認する構成を取っているため、一見、迂遠に感じられるかもしれない。しかし、現在の政治的論点を相対化しながら捉え返す視座を提示するためにこそ政治思想史の知見を活用して