(2009年6月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 欧州連合(EU)の長期的な結束に対する最大の脅威は何だろうか。リスボン条約が頓挫する事態か。外交政策上の惨事が再び起きることか。それとも、今週の欧州議会選挙の投票率が低いことだろうか。 筆者はどれも違うと思う。最大の脅威は欧州単一市場が蝕まれることだ。そして、これは既に起きているのかもしれない。 単一市場は欧州法に明記されている。これをひっくり返すには欧州条約の変更が必要であり、明らかにそれは実現しない。このため、単一市場は崩壊することもないし、ほかの何かに取って代わられることもない。 本当の脅威は、単一市場が静かに衰えていくことである。 静かに衰えていく単一市場 昨年9月、銀行がトラブルに陥った時、各国政府は政策を「国家化」した。大半のEU諸国は欧州共同体競争法のことなど顧みず、独自の銀行救済策をまとめた。ロンドン・スク