樹木希林のインタビューだ。 訊き手は、是枝裕和。 公開中の映画『海よりもまだ深く』の監督。 樹木希林は、この映画で、団地に一人住まいの母を演じている。 『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』を観ていなかったら樹木希林にオファーをしてなかったと是枝監督は語り、ワンシーンを一緒に観る。 −ここで希林さんは椅子の背もたれをちょっとだけ戻す、という芝居をされていますよね? 希林は答える。 「決心だよね、私の」 決心? どういうことだろうか。 −あれがすごくいいんですよね。新幹線の中で前を見てスッと椅子を戻す感じが、もう故郷には戻らないで東京で暮らしていくというオカンの覚悟をすごく明快に表しているんです。 「そうですね」と答えながら、希林は、「私自身はそんなことは何にも考えないでいたのよ」と言う。 次に、希林がそうめんを食べるシーンを観る。 「これの何がいいんですか?」と希林が尋ね、普通の