ドライヤー、存在の神秘の探求者 中条省平(映画評論家) 映画とは、基本的に、イメージを使って物語を語ることです。観客は、スクリーンに映しだされるイメージを見ていますが、同時に、そのイメージが描きだす物語や、イメージのもつ意味を考えて、イメージの向こう側に自分なりの物語や意味の解釈を作りだしていきます。 そもそもイメージとは、語源的に「イミテーション」のことで、本物の事物に表面だけが似かよった模造品にすぎないのです。イメージの背後には現実は何も存在していません。そのことは、鏡の映しだすイメージのことを考えてみれば明らかです。鏡像は本物そっくりですが、その背後には何もありません。イメージ(映像)とは、本物の現実にそっくりの空虚でしかないのです。ですから、映画とは、空虚なイメージを用いて、その向こう側に物語や意味を作りだすイリュージョン(幻影)の装置にほかなりません。 そのようなイメージの本質に