記事:筑摩書房 original image: EsanIndyStudios / stock.adobe.com 書籍情報はこちら 「投石少年」が事件後、保護観察期間中に石原慎太郎を訪ねたことはよく知られている。それは石原がそのことをエセーとして残しているからである。 投石少年は石原によれば投石事件から二カ月に満たない1959年6月4日、長野での講演を終えた石原の宿泊先を訪問する。投石少年は旅館の客室係に面会の取り次ぎを依頼した。 名を訊くまでもなく靴をはいた僕の目の前に当人がいた。青い背広を着、顔色の青白い眼鏡をかけた青年はこうした旅先の大体何処ででも出会う地方の文学青年に見えた。「貴方と話したいことがあります」と彼も言った。(石原慎太郎「あれをした青年」『文藝春秋』1959年8月号) 「話したい」と投石少年が石原に言ったことは案外と重要である。石原は講演先などに出没する文学青年の類と