日本一クジラを解剖してきた研究者・田島木綿子さんの初の著書『海獣学者、クジラを解剖する。~海の哺乳類の死体が教えてくれること』は、海獣学者として世界中を飛び回って解剖調査を行い、国立科学博物館の研究員として標本作製に励む七転八倒の日々と、クジラやイルカ、アザラシやジュゴンなど海の哺乳類たちの驚きの生態と工夫を凝らした生き方を紹介する一冊。発売たちまち重版で好評の本書から、内容の一部を公開します。第19回はクジラの標本製作の費用について。 海の哺乳類は、一つの個体が大きいため、ストランディングで貴重なクジラを得られても、収蔵方法や収蔵場所を用意するのに一苦労する。 たとえば国立科学博物館で特別展を開催することになったら、心臓や腎臓などの臓器標本、寄生虫標本や仮はく製などは、私たち科博のスタッフでも準備し作製できるが、〝展示の目玉〞となると、それ相当のクオリティの標本が必要になる。 そのため、