海上自衛隊の潜水艦修理に絡む川崎重工業の裏金問題で、防衛省は10日、海自側への金品供与のため川重が捻出した額が年2億円程度、総額で少なくとも十数億円に上ることを明らかにした。防衛省は現在、裏金問題に関する特別防衛監察を実施しており、近く関係者を処分する方針。 防衛省が10日の自民党国防部会などの合同会議で明らかにした。また、防衛省は国の安全保障に関わる機密情報の「特定秘密」について違法な取り扱いが幅広くあったことや、パワハラなどが確認されたとも説明した。【森口沙織】
宮崎県都城市などを流れる大淀川第一ダムの上流域で新たな外来魚「コウライオヤニラミ」が侵入から短期間で爆発的に増加し、水系全体の生態系に影響を及ぼしていることが北九州市立いのちのたび博物館(八幡東区)や京都大などの研究で判明した。研究者は他水系での拡大に警鐘を鳴らし、国に特定外来生物の指定を求めている。【山下智恵】 いのちのたび博物館 危険性周知へ展示 コウライオヤニラミは、朝鮮半島原産の淡水魚で最大30センチ程度に成長し、魚類や甲殻類などを好む肉食性。日本では一部の愛好家向けに観賞用として輸入されていたが、2017年の宮崎県の調査により大淀川水系の支流で初めて捕獲された。同水系に放流されたとみられる。 その後、18年と21年に博物館などが目視や捕獲調査で生態系を調査した。18年はコウライオヤニラミは確認できなかったが、21年には多数目視された。一方、水系の固有種であるオオヨドシマドジョウが
奈良時代の聖武天皇愛用品など約9000件が納められた正倉院(奈良市)の宝物で、巻物の軸に塗られた跡が残った当時の接着剤が、現在は使われなくなった大豆糊(のり)であることが正倉院事務所の研究で分かった。他の宝物では動物性のにかわや「乳香」と呼ばれる樹脂の接着剤が主に使われており、用途により使い分けていたとみられる。大豆糊は奈良~平安時代の経典などで使われていたとされるが、正倉院で確認されたのは初めて。【稲生陽】 正倉院では紙が巻かれていないヒノキやスギの巻物軸が未使用分も含め多数残っており、うち一部には接着剤とみられる褐色の跡が見つかっている。今回、正倉院事務所の中村力也保存課長の分析で、接着剤の跡に大豆と同じ成分が含まれていると判明した。東京文化財研究所の早川典子修復材料研究室長によると、大豆糊は中国の6世紀前半の文書に記述があり、日本でも奈良時代には主に経文に使う紙同士の接着に使われてい
人の細胞から作った「生きた皮膚」を持つ顔型ロボットを作製したと、東京大などのチームが発表した。筋肉の動きが皮膚に伝わる仕組みを模した独自の構造を開発し、笑顔を作ることもできた。しわができる過程の解明や、化粧品や医薬品開発での動物実験の減少などに役立つという。 従来の人型ロボットの多くは、皮膚として柔らかいシリコーンゴムを使っている。チームは、より人間らしいロボットにするため、人の皮膚細胞を培養し、真皮層と表皮層からなる厚さ約2ミリ、直径約25ミリの顔の皮膚を作った。 こうした生体組織をロボットのような人工物に固定するには、突起にひっかける方法がとられてきたが、見た目や動きが悪くなる課題があった。チームは、人の皮下組織の構造を参考に、ロボットの表面に開けた穴に組織を入り込ませて固定する新たな仕組みを開発。スムーズな動作を実現した。 チームはこれまで、同様の皮膚で覆った指型ロボットも開発してき
ある中小企業が突然、不正輸出のぬれぎぬを着せられました。 捜査した公安警察の手法に疑念が持たれています。 その内幕を明らかにしようと、記者は追跡を続けました。 約1年にわたる取材録をつづります。 連載「追跡 公安捜査」は全10回です。 このほかのラインアップは次の通りです。 第1回 「公安は同じことやる」大川原化工機事件、捜査員が私に語った警告 第2回 公園の植え込みに潜む秘密資料を「拾った」私 まるでスパイ映画 第3回 中小企業はなぜ狙われたのか 私が感じた公安警察の「異質さ」 第4回 「なら有罪だね」弁護士の思わぬ一言、残された社員の心に火がついた 第5回 「私は公安に利用された」 ただ一人、匿名望んだ小児科医の後悔 第6回 公安の聴取あったのか 私の直撃に答えた社長、4日後の態度急変 第7回 他社のスクープに「やられた…」 つかめなかった真実、調査報道の壁 第8回 「ちゃんと調べてく
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で、政治資金規正法違反(虚偽記載)に問われた清和政策研究会(安倍派)事務局長兼会計責任者の松本淳一郎被告(76)は18日、東京地裁で開かれた第2回公判の被告人質問で、政治資金収支報告書に記載しなかったとされるパーティー券収入のノルマ超過分のキックバック(還流)について、「(安倍派の)会長のゴーサインをもらっていた」と明らかにした。 松本被告の説明によると、毎年パーティーが終わる度に、パーティー券収入の入金状況について資料を作成し、会長に説明した上で、ノルマ超過分についてパーティー券を販売した議員側に還流する作業を進めていたという。松本被告は「事務局長の独断ではできなかった」と振り返った。 また、2022年3月、当時の会長だった安倍晋三元首相から「還付のやり方には問題がある」と言われ、翌4月に幹部議員で協議して、一度は還流中止を決定したと説明した。 ただ
ある中小企業が突然、不正輸出のぬれぎぬを着せられました。 捜査した公安警察の手法に疑念が持たれています。 その内幕を明らかにしようと、記者は追跡を続けました。 約1年にわたる取材録をつづります。 連載「追跡 公安捜査」は全10回です。 このほかのラインアップは次の通りです。 第1回 「公安は同じことやる」大川原化工機事件、捜査員が私に語った警告 第2回 公園の植え込みに潜む秘密資料を「拾った」私 まるでスパイ映画 第4回「残された社員の奮闘」 第5回「『利用された』医師の後悔」 第6回「公安の聴取はあったのか」 第7回「調査報道の壁」 第8回「警部補たち異例の直訴」 第9回「長官狙撃事件との共通点」 第10回「正義のありか」 カップラーメンのスープの粉やインスタントコーヒーの粉末、粉ミルク……。 生活に身近な製品が、噴霧乾燥器で製造されていることはあまり知られていない。 化学機械メーカー「
ある中小企業が突然、不正輸出のぬれぎぬを着せられました。 捜査した公安警察の手法に疑念が持たれています。 その内幕を明らかにしようと、記者は追跡を続けました。 約1年にわたる取材録をつづります。 語り出した捜査員 今日も取材を断られるだろうか。そんな暗い予感が頭をよぎる。 少し肌寒くなり始めた2023年10月のある夜、とある住宅街。私(記者)はある人物の自宅インターホンを押した。 私は、警視庁公安部が主導した捜査にあやまちがあったのではないかと考え、取材をしていた。 その捜査とは、軍事転用可能な装置を不正輸出したと疑われた化学機械メーカー「大川原化工機」を襲った冤罪(えんざい)事件に関するものだ。
「子どもが好きなのに。近所の店には置いていない。」。そんな声を聞き、記者が暮らす福岡市でスーパーを何店か訪ねたが「ゆかり」は置いてあっても「菜めし」を見つけることができなかった。三島食品に連絡すると、意外な答えが返ってきた。「広島菜のふりかけ『ひろし』に置き換えられているのです」 三島食品によると、「菜めし」は1981年の発売で、広島菜と京菜、大根葉の3種類の青菜(一部外国産含む)に加え、カツオの削り節粉末や昆布エキス、粉末みそなどを含む芳醇(ほうじゅん)な味が特徴。看板商品の「ゆかり」ほどではないが、一定のファンが付いている。一方、「ひろし」は国産の広島菜を100%使用し、塩ベースの味付けで2021年に販売を始めた。 「ひろし」人気のきっかけは、売り場に「ゆかり」、「かおり」(青じそ)、「あかり」(ピリ辛たらこ)が並んでいるのを見つけた消費者が18年にSNS(ネット交流サービス)で「3姉
テレビ東京の石川一郎社長は30日、東京・六本木の同局で定例社長会見を行い、昨年3月28日に放送された「激録・警察密着24時!!」の演出に事実誤認があったことを謝罪。番組を終了させることを明言した。 石川社長は「この番組は、外部の制作プロダクションと作ったものでございますが、放送責任は我々テレビ東京にあります。視聴者の皆様と関係者の皆様にご迷惑と誤解を与えて、名誉を傷付けたことを、テレビ東京の社長として深く反省し、心からお詫び申し上げます。申し訳ありませんでした」と頭を下げた。 この事案が発生した経緯は「きちんとした確認作業をしていなかったということに尽きる。我々のミス」と説明。取材対象者からの指摘により、昨夏から調査が始まっているとした。長田隆常務取締役は、再発防止策について「基本的にあらゆる番組で担当する人間全員が注意点を認識し、それを共有した上で番組の制作に入る。今回は、その注意点に認
これも「法の抜け道」なのか――。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件に絡み、菅家(かんけ)一郎元副復興相が安倍派の「裏金」を原資に、自身が当時代表を務めていた党支部に寄付し、税控除を受けた疑いが浮上した。さらに、支部から菅家氏や後援会に資金が支出されていたことも判明。政治家が政党支部を「迂回(うかい)」して寄付し、利益を得る行為は過去にも批判を浴びたが、法規制が及んでいない。 「国民の政治参加推進」のはずが 個人が政党や政党支部などに寄付した場合、所得税が控除される仕組みは「政党等寄付金特別控除」制度と呼ばれ、租税特別措置法に基づき1995年1月に導入された。財務省によると、政党などへの個人献金を促し、国民の政治参加を推し進める目的があったという。 国会で問題になってきたのが、控除を受けられる条件だ。租税特別措置法では「寄付をした者に特別の利益が及ぶ」場合には優遇措置を受けられないと規定
船に載せられ、紀伊水道沖に運ばれるマッコウクジラ。この後沈められた=2023年1月19日午後2時35分、本社ヘリから 大阪湾で死んだマッコウクジラの処理費を巡り、大阪市が厳しい批判にさらされている。当初の試算額の倍以上で海運業者と随意契約。住民監査請求を受けた市監査委員が、金額ありきで契約交渉が進められた疑いがあるとして、横山英幸市長に再調査を勧告する事態に発展した。毎日新聞が入手した業者との交渉記録によると、処理を担当した大阪港湾局の当時の幹部が業者の意に沿う形で金額の引き上げを促していた。 クジラは2023年1月9日に大阪湾の淀川河口付近で見つかり、13日に死んでいるのが確認された。19日には市の依頼を受けた市内の海運業者が作業船で運び、紀伊水道沖に沈めた。緊急性のある作業だとして、入札せずに随意契約を進めた。業者はその後、市に8625万円の見積書を提出。一方、港湾局は3月初めに377
参院予算委員会で立憲民主党の辻元清美氏の質問に答弁する岸田文雄首相=国会内で2024年5月22日午後1時37分、平田明浩撮影 岸田文雄首相は22日の参院予算委員会で、政治資金規正法改正で焦点となっている政策活動費について「政治活動の自由との関係において一概に禁止するのではなく、透明性を高めていくことが重要だ」と述べ、禁止する考えがないことを改めて強調した。 自民党の改正案では、政党から政策活動費の支出が1件あたり50万円を超える場合、「選挙活動費」などの項目を収支報告書に記載する。野党は予算委で「適正に使われたか、領収書を見ないと確認できない」と指摘したが、首相は「個人のプライバシーや企業の営業秘密、政党の大きな方向性を外部の政治勢力や外国に知られることになる。領収書を全て明らかにすることになると、さまざまな不都合が生じる」などと従来の説明を繰り返した。 政治資金パーティー券購入者の公開基
「最近、文学界で大津が来てる」――。先月、宮島未奈さんの「成瀬は天下を取りにいく」が本屋大賞を受賞。大津城の戦いを描いた今村翔吾さんの「塞王の楯」が2022年に直木賞を取った時に抱いた自信が確信に変わった。だが、ちょっと地味な大津を読者はどれだけご存じなのか。ここは一番、大津在住30年の記者が紹介せねばなるまい。そう考えて「成瀬」の舞台・膳所を歩いた。【山本直】 膳所は「ぜぜ」と読む。平安時代に魚介類を朝廷の食膳に供給する所だったことに由来するらしい。大津市は県庁所在地なのに「中核」といえる繁華街がなく、大津、浜大津、石山、瀬田などにこぢんまりした盛り場がある。膳所もその一つ。JR東海道線と京阪が乗り入れているので便利だが、JRの新快速は大津と石山に止まってはざまの膳所は飛ばす。
1966年6月に静岡県清水市(現静岡市)で一家4人を殺害したとして、強盗殺人などの罪で死刑が確定した袴田巌さん(88)に対し、検察側は22日、静岡地裁で開かれたやり直しの裁判(再審)で、確定審に続いて再び死刑を求刑した。弁護側は「証拠は捏造(ねつぞう)、無罪は明白」と改めて訴え、結審した。国井恒志裁判長は判決期日を9月26日に指定した。 死刑囚に対する再審公判での死刑求刑は戦後5件目。過去の4件はいずれも無罪判決が言い渡されており、袴田さんの再審も無罪とされる公算が大きい。 検察側は論告で「多くの証拠が(袴田さんが)犯人だと指し示している。4人の将来が一瞬にして奪われ、犯行は冷酷、残忍だ」と死刑求刑の理由を述べた。 これに対し、心神喪失の状態にあるとされた袴田さんの代わりに出廷した姉秀子さん(91)は、審理の最後に「巌はいまだに妄想の世界にいる。どうか、巌を人間らしく過ごさせていただけます
大阪と奈良府県境の大和川沿いの地滑り地帯「亀の瀬」に3月末、新しい「亀の瀬地すべり歴史資料室」(柏原市)が誕生した。資料室を起点にしたガイドツアーに同行し、世界最大規模の地滑り対策の一端に触れ、貴重な近代化遺産でレンガ造の旧鉄道トンネルを見学した。【熊谷仁志】 亀の瀬は、主要部が大和川の北(右岸)側(柏原市)に位置し、川の南側が奈良県王寺町、東側が同県三郷町になる。戦前の1931~32年、大規模な地滑りが発生。川の北側を走っていた鉄道は南側に迂回(うかい)するようになった。 地滑りで大和川がせき止められて奈良盆地が浸水、やがて決壊して大阪を洪水が襲う――。そんな最悪のシナリオを避けるため、国が直轄で対策工事を始めたのは62年。土を取り除き、雨水が土にしみこまない集水対策を行い、巨大な杭(くい)を最深100メートルまで170本打った。世界最大級の地滑り対策という。
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