長年、なぜ「アンデスのリトゥーマ」は邦訳が出ないのか疑問だった。同じ人物が主人公の「誰がパロミノ・モレーロを殺したか」1992年に出ているし、「楽園への道」(2003)ですら出たのになと思っていたら、ようやく2012年に刊行された。 リトゥーマはおなじみの登場人物で、これで3回目の登場になる。まっすぐでいい男だと思う。山岳部=アンデスというのは、自然環境が人間に厳しく、暗く救いようのない物語になりがちだ。そこを救っているのが、助手トマスのロマンチックな恋物語である。 アンデス山中奥地のインディオの村ナッコスに赴任しているペルー治安警備隊のリトゥーマ伍長が助手のトマスと行方不明になった3人の男たちの消息を探る。口のきけないペドロ・ティノーコ、アルビノのカシミーロ・ワルカーヤ、道路工事の現場監督のデメトゥリオ・チャンカの3人である。リトゥーマは捜査をしていたが、一向に真相がわからない。本部より