日銀の金融緩和について「金融抑圧」という表現が使われることがある。総じて批判的なニュアンスで、金利を人為的に低下させるという意味で使われているようだ。 もともとは、「金融抑圧(financial repression)」とは、開発経済学で用いられていた概念だ。開発途上国で、長期にわたり貯蓄者に対して大きなマイナスとなるような実質金利を課し、結果として貯蓄を減少させる政策を指す。ところが最近、カーメン・ラインハート氏らの国際経済学者の間で、こうした政策は、実は1980年代まで先進国で見られていたという主張がなされるようになった。さらに、最近急増している公的債務を削減するためには「金融抑圧」が一つの選択肢であるとも主張している。 これに対して、ポール・クルーグマン氏は、その「金融抑圧」の用語法には違和感があると指摘している。先進国では、低金利政策であっても貯蓄を減少させるほどではなく、経済成長