ひとりで暮らしていたときは お腹が空かなかったのに、 ふたりで暮らすようになってから しっかりお腹がグゥと鳴る。 胃袋が空っぽですと、 体が私に知らせてくる。 私の食生活を見かねてか、 「そろそろ一緒に暮らそうか」と 言ってくれたのは彼女から。 引っ越すことで変わるのは 部屋だけだと思っていたけど、 まさか胃袋まで変化するとは。 仕事を終えて家に着くと、 今日のご飯はなにかなぁと まず考える自分がいる。 ソワソワして、ワクワクして、 つい口角がゆるんと上がる。 玄関を開けると、 ふわりと届くいいにおい。 今日のメニューはなんだろう。 1階も2階も無垢材の床で 足の裏が気持ちいいから、 スリッパは履かずに 裸足でスルスルと移動する。 廊下を進んで 広々したリビングに入ると、 キッチンに立つ彼女の姿。 「ただいまぁ」と言うと、 「おかえり」と返ってくる声。 それがうれしくて、たまに 何度もただ
将来を考えずにいることが、 今を楽しむコツだって。 いつしか未来を夢見ることさえ 諦めていた私に、彼女が言った。 「そろそろうちらの家、 ちゃんとあってもいいかなって」 「海のそばに住みたいって、 いつか言ってたでしょ」 ニコニコしながら 彼女が見せてきたのは まるで夢みたいな家で、 そう、夢みたいな家で…。 受け止め方がわからない私に、 やさしい口調で彼女が続ける。 「この先を考えてもいいじゃん、 だってふたりでいたいでしょ」 暮らし始めたばかりのころは、 やっぱり夢の中みたいで。 帰宅して家が見えてくるたび、 部屋が空っぽだったら どうしたらいいんだろうって。 玄関を開けて不安を 少しずつ消していくうちに、 やっと「ただいま」を 笑顔で言えるようになった。 フルリノベーションされて ピカピカになった部屋は、 きれいと居心地のよさを どちらも兼ね備えていて。 よく探してくれたなぁと、 彼
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