今から200年近く前となる、1828年5月26日の夕方。 ドイツでは聖霊降誕祭となるこの日のニュルンベルクで、靴屋を営むジョルゲ・アイヒマンは、広場でうずくまる見慣れない少年を見かけました。 少年はおびえた様子で、どこか普通ではなく、汚れた服を着て、その手には手紙を持っていますした。 ジョルゲは気になって声をかけますが、何を質問しても、どう聞いても、『ワカラナイ』、『ワタシハ、父ノヨウナ軍人にナリタイノデス』、『ワカラナイ』という返事しか返ってきません。まるで、その言葉しか教えられていないかのように…。 少年は、世界のなにもかもにおびえているように見えました。 その足は反り返るほどまっすぐに固まっており、ひざの裏は変形してへこみがなく、まるで『人生でほとんどひざを曲げたことがない』かのような状態だったのです。 少年のよたよたとした歩き方を見て、ジョルゲは、なにかただならぬ事情があるのを察し