「これは学生時代に本のカバーにしていた紙でね。昨日見つかったんですよ」と話す渡辺恒雄さん。古代ギリシャ語の書き込みに「少しは勉強してたな=東京都中央区の読売新聞グループ本社で、山本晋撮影 「ぼろぼろになるまで読んだ本」。一冊の本を繰り返しめくり、生きる糧にしてきたという情熱あふれる言い方だが、電子本の時代には死語になる。存在だけで何かを主張しているような紙の本と、本棚がまるごと収まるハイテク端末。読む側にとって、どんな違いがあるのだろうか。【藤原章生】 ◇触感が記憶を強める 「だからね、あれに書き込めるかってんだよ。こう、書き込みながら、アンダーライン入れたりして頭に入れて、中身を再構成して理解する。それをあんなものでできますか? 僕には想像もつかないね。絶対にできないね」 読売新聞主筆、渡辺恒雄さん(86)は昭和2(1927)年発行のカントの「実践理性批判」を手にべらんめえ調になった。「