<亡くなった研究者やビブリオマニアの蔵書はどこへ行くのか。必要としているところに受け継がれるシステムはできないものか。数カ月前、ある亡くなった研究者の蔵書処分を手伝うことになった> 「大きな研究成果を上げて将来を期待されながら、自ら命を絶った女性がいる。享年43歳。多くの大学に就職を断られ、追い詰められた末だった」 これは、今年4月10日に朝日新聞が報じた、ある女性研究者の自殺に関する記事冒頭である。記事によると、彼女は東北大学で日本の仏教史研究で博士号を取得し、受賞経験もある、将来を嘱望された研究者だったという。彼女の自殺自体は2016年で、直近の話ではなかったものの、事件の痛ましさもあって、記事は、似たような境遇にある人、また似たような経験を経た研究者たちに大きなインパクトを与えた。 私も大学の教員やシンクタンクの研究員という研究の道を歩んできたので、事件は他人事ではない。彼女のように
この連載をはじめる前、もしこの人に出てもらえたら……と最初に思い浮かべたのが、「神保町のオタ」さんだった。まったく知らない人なのに、ブログやツイッター上では10年以上前からやり取りがある。以前は「ジュンク堂書店日記」、現在は「神保町系オタオタ日記」と題するブログでは、初めて聞く人名や書名のオンパレード。著名な作家についても、古本屋や即売会で拾った思いもかけない資料を持ち出して、新鮮な角度で攻めてくる。 これだけ活発に発信しているのに、この人の個人的なことは一切判らない。関西在住らしいが、頻繁に東京に来ているようでもある。あまりに謎なので、私は一時「オタさん架空説」を唱えていた。オタさんは実在せず、彼と最もネット上でやりとりのある書物蔵さん(本連載の2回目に登場)の変名だという見解だ。そのやり取りも自作自演……。「なんでそんなこと、わざわざするんですか?」という知人のもっともな疑問にも、「あ
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