目次 前回は環を導入してイデアルを定義した。環をイデアルで割った余りを考えることが出来て、それを剰余環と言った。剰余環におけるイデアルと、元の環におけるイデアルとの間には、イデアル対応定理と呼ばれる対応が存在した。この対応により環の内部構造を簡約化し、部分的に調べることが可能となる。今回は視点を変え、環の外部構造について調べたい。 加群と準同型 現実社会において、数は単位を伴って現れる。時速40kmの車が2時間走れば80km進む。80という数字は40と2の積で求めることができるが、その数自体が住む世界は違う。例えば80という数字が住む「長さの世界」には、「足し算」と「定数倍」は定義されている。しかし長さ同士の「掛け算」は面積を表すことになるので「長さの世界」に「掛け算」は定義できない。「長さの世界」は整数によって表現されるが、その表現を通すことで積の値は意味を持たなくなる。このような環の構