昨今、ネット上の書きこみを見ていると、我が子が学校で先生に「習っていない漢字を書いてはいけない」「先に課題を進めてはいけない」と理不尽な指導を受けたと保護者の不満の声が度々上がっています。 こういった指導に対し、私もナンセンスだとは思いますが、教師には教師でこういった指導をする(あるいはせざるを得ない)理由があるのです。 正しい、正しくないかは別にして、なぜ教師がこういった指導をするのか、理由を知っていても損はないと思うので、説明していきます。 1.画一的に教えたい 学校の教師は1人で40人近くみなくてはならず、学力下位層にも理解・定着させるために、どうしても画一的に教えたくなる(あるいはそうせざるを得ない)傾向があります。 例えば、筆算のくりあがりをどこに書くか、きちんと場所を指定して指導したかったりするわけです。そこで、子どもが先に別のやり方(あるいは間違ったやり方)でやっていると指導
「日本は先進国のふりをした前近代的な社会である」と作家の橘玲氏は指摘する。 つまり、日本は法や規則により統治する社会ではなく、「習慣」や「道徳」を優先する社会だということである。 私は、日本の学校はまさにこの通りだと思う。 具体的な例を3つ挙げて説明する。 ◆例①出席停止 例えば、なかなか運用されない出席停止。 私語・暴力等により継続的に授業妨害を行う児童生徒に対しては他の児童生徒の学習する権利を守る観点から、出席停止という規則が用意されている。 しかし、なかなか現場では適用されない。 なぜか。 出席停止にした児童生徒の学習機会を確保するのが難しいという理由もあるが、一番の理由は、適用された前例がないという「慣習」や適用されたら(加害者の)児童生徒がかわいそうという「道徳」を優先するからである。 その結果、学級崩壊状態が是正されず、真面目な児童生徒が学習を妨害される、教師が体罰をしてしまう
以前、新聞記者から取材を受けた際、「職員室の『同調圧力』とはどういうものなのですか?」と質問されたことがある。 そのときうまく答えることができなかったので、今回ここにまとめておきたい。 公立学校の教員には法律で残業代を支給しない代わりに時間外勤務命令を行ってはならないとある。そのため、例えば勤務時間外の部活動指導や登校指導、休日のPTA行事への参加などは労働としては扱われない。 建前としては、”命令ではなくお願い”ということで教員に行わせている。あくまで”お願い”なので、強制力はないはずなのだが、そこを補完するのが『同調圧力』である。 では『同調圧力』とは具体的にどのようなものなのか。一般の方にも理解できるように書いていきたい。 ステップ① 全員が行う前提で計画される まず、全員が行う前提で計画される。 本来、お願いなのであるから、選択肢があるはずなのに、選択する機会は設けられず、全員が行
未だに朝の挨拶運動や登校指導など違法な時間外労働を求められることが多い学校現場。 民間企業であれば残業代が出されるべきなのだが、公立学校の教員には「残業代を支給しない代わりに時間外勤務命令をしてはならない」という法律(給特法)がある。 要するに、公立学校の教員に対しては使用者である学校長は時間外勤務命令をしてはならないということなのだが、冒頭の通り現実にはそうはなっていない。 どういうことなのか。 民間労働者(労働基準法)の常識から考えれば信じがたい理屈なのだが、表向きの体裁としては、校長は教員に対し、“命令ではなくお願い”をしているという理屈なのだ。 つまり、強制はしておらず、教員自らが自主的に働いている、という建前である。 実際、2019年12月に始まった埼玉県の小学校教諭が起こしている訴訟でも、勤務開始前の登校指導について埼玉県教育委員会は「協力依頼をしたまでであり命じてはいない」と
2月21日(金)、さいたま地裁で教員超勤裁判の第7回目が行われました。この裁判、今後の日本の公立学校教員の超勤問題を左右するレベルの裁判だと思い、継続的に注目しています。 先日、第7回裁判資料(埼玉教員超勤訴訟・田中まさおのサイト)で双方の書面が公開されましたので、今回も全文読む余裕がない方に向けて重要と思われる部分のみを抜粋して整理しました。 ◆前回までの記録 第1回埼玉県教員超勤裁判の原告先生と県の主張の要旨をまとめた 第2回埼玉県教員超勤裁判の原告先生と県の主張の要旨をまとめた 第3回埼玉県教員超勤裁判の原告先生と県の主張の要旨をまとめた 第4回埼玉県教員超勤訴訟の原告先生と県の主張の要旨をまとめた 第5回埼玉県教員超勤裁判の原告先生と県の主張の要旨をまとめた 第6回埼玉県教員超勤裁判の原告先生と県の主張の要旨をまとめた ◆今回の原告先生の反論 職員会議(勤務開始前の登校指導など)に
埼玉教員超勤訴訟以前にも、公立学校教員の残業代請求を求める裁判は起こされてきた。しかし結果は多くの裁判で教員の残業は「自発的」であると、裁判所に判断されてきた歴史がある。 しかし、これまでの裁判と今回の埼玉超勤訴訟の大きな違いは、今回は「職員会議の位置づけ」が変わった後に起こされた裁判なのである。 ◆「職員会議の位置づけ」が変わった 2000年、学校教育法の改正で施行規則48条で、職員会議の位置付けが変わった。 1.小学校には、設置者の定めるところにより、校長の職務の円滑な執行に資するため、職員会議を置くことができる。 2.職員会議は、校長が主宰する。 この学校教育法改正で、職員会議から“協議性”が消えた。 それまでの職員室は多数決により物事を決定していた。しかし、この改正により、多数決は禁止、校長による決定が可能になったのだ。 ◆職員会議を経た業務には、校長による業務命令の性質があるのか
12月13日(金)、さいたま地裁で教員超勤裁判の第6回目が行われましたので、その取材に行ってきました。 本記事は、双方の主張全文がアップされている、第6回裁判資料(埼玉教員超勤訴訟・田中まさおのサイト)から、全文読む余裕がない方に向けて、重要な部分のみを抜粋してまとめたものです。 ◆前回までの記録 第1回埼玉県教員超勤裁判の原告先生と県の主張の要旨をまとめた 第2回埼玉県教員超勤裁判の原告先生と県の主張の要旨をまとめた 第3回埼玉県教員超勤裁判の原告先生と県の主張の要旨をまとめた 第4回埼玉県教員超勤訴訟の原告先生と県の主張の要旨をまとめた 第5回埼玉県教員超勤裁判の原告先生と県の主張の要旨をまとめた ◆今回の県の答弁 まずは前回の原告先生の主張(反論)に対し、県も再反論してきましたので、抜粋しました。 休み時間に事務作業が可能かについて 休み時間中に、児童の連絡帳を読んだり返事を書くなど
今国会で導入が検討されている公立学校教員の変形時間労働制。 10月8日(火)に衆議院議員会館で行われた、「変形時間労働制」導入撤回を求める署名集会を取材してきました。 正式には、「学校の長時間労働と給特法のこれからを考える集い」という名前の会でしたが、内容としては『変形時間労働制導入撤回を求める署名集会』だったと思います。与党議員に配慮したため、曖昧な会の名前になったのではないかと類推します。 では、本題に参ります。 ◆会の要旨 会は現職高校教員の斉藤ひでみ教諭、過労死教員遺族の工藤祥子さんから署名の説明から始まり、名古屋大学内田良准教授などによる制度の解説等がありました。 主要なメディアの方々、文科委員の議員も多数出席されていました。 以下、会の要旨をまとめました。 斉藤ひでみ教諭「長期閉庁期間の延長で十分」 斉藤教諭は、夏休みにしっかりと休ませることが目的であれば、「長期閉庁期間の延長
埼玉超勤訴訟で埼玉県教委が主張した内容が物議を醸しています。 勤務時間を大幅に超える業務を与えられていると主張する原告先生に対し、給食・清掃中も事務作業が可能だと主張したのです。 給食指導や清掃指導が不可欠な事は確かであるが、給食や清掃の作業は高学年になるにしたがって児童に任せられる部分が多くなり、時間中、常に児童に対する指導業務に従事する必要がなくなる。教員自身が給食を食べ終わった後、児童の様子を時々観察しながら、事務作業をすることも可能であり、実際に行っている教員もいる。また、清掃についても児童による清掃作業を見守りながら、教室内の掲示物の張替え作業等を行っている教員もおり、そのような並行作業を行う事について、校長から教員に対し、並行作業を止め児童の指導に集中するよう指導したことはない。 「県は給食や掃除の時間に他の仕事ができると言っています。私はそれはできないと主張しています。詳しく
【次回告知】 9/20(金)11時〜 さいたま地裁C法廷 次回は、前回私が提示した労働時間法制・法解釈に対する県の答弁があるのと、新たに私も教員がどの時間帯にどんな仕事をしているのかについて詳しくまとめた「勤務状況の詳細」を提出します。 終了後には報告会も予定しています。 pic.twitter.com/0FO0BeCSSN — 埼玉教員超勤訴訟・田中まさお (@trialsaitama) August 27, 2019 9月20日(金)、さいたま地裁で教員超勤裁判の第5回目が行われましたので、その取材に行ってきました。 本記事は、双方の主張全文がアップされている、第5回裁判資料(埼玉教員超勤訴訟・田中まさおのサイト)から、全文読む余裕がない方に向けて、重要な部分のみを抜粋してまとめました。 ◆前回までの流れ 第1回埼玉県教員超勤裁判の原告先生と県の主張の要旨をまとめた 第2回埼玉県教員超
Twitterを眺めていたら次の投稿が流れてきた。 最近わかったことですが、同じ再任用の学級担任の仕事でも、校長から担任になった人と担任から担任を続けている人では、月給が10万以上も違うのです。同じ年齢で同じ仕事をしているのに、この差は大き過ぎると思います。 — さとうさん (@sato44445217) July 13, 2019 どういうことなのかと思い、このさとうさんにDMで詳しい話を聞いてみた。 ◆元校長の年収は約120万円高いという不思議 さとうさんから教えていただいた話を要約すると次のとおり。 さとうさんは再任用で公立小学校働いている 仕事内容は定年前までとまったく同じで、担任ももっている 元校長は以前は初任者指導の仕事をしていたが、今は人手不足の影響で担任の仕事に駆り出されるようになった(これも結構ビックリ!!!) つまり、さとうさんと元校長はまったく同じ仕事をしているのに給
「特色ある学校づくり」とは、1996年の第15期中央教育審議会第一次答申によって提唱され、1998年の教育課程審議会答申で示された施策である。 そのなかでは、「各学校において創意工夫を生かした特色ある教育課程を編成・実施し、特色ある学校づくりを進めていくことが特に求められる」とされている。学習指導要領においても、各学校が創意工夫を生かし、特色ある教育活動を展開することが繰り返し強調されている。 具体的に学校現場では、 ICT教育に力を入れる学校 吹奏楽(全員参加)に力を入れる学校 外国語教育に力を入れる学校 といった具合に実施されている。 この「特色ある学校づくり」、一見良い施策に思われるかもしれないが、矛盾している施策ではないか、子ども・教員に大きな負担を強いてないかというのが私の意見である。 ◆全国どこでも同じ教育が受けられるのが公教育だったのでは…? 日本の公教育は、全国どこの学校に
昨今、教員の人材不足、教員採用試験の倍率低下等が報道されている。教育委員会の担当者は、こぞって「教職の魅力・やりがい、アピールを」という。 県教委教職員課の藤川正樹課長は「教員として働くことの魅力を発信して、優れた人材の確保に努めたい」と話している。 (出典:徳島新聞「進む教員離れ」2018年11月29日) 文部科学省教職員課・佐藤光次郎課長「教員の仕事の重みとかやりがいが、ひとつの選択肢として確実に出てくるような魅力の発信を進めていきたい」 (出典:NHK「公立小中学校の教員不足」2017年7月4日) これまで私は、この類の発言に対し、「そこじゃない、問題は労働環境、教職に魅力があることは分かっている!」と反応してきた。 しかし、ふと、思った。 そもそも、今、教職に魅力はあるのだろうか、と。 ◆奪われつつある「自分にしかできない」仕事 魅力というのは主観的なものなので、当然一人ひとりが異
教育法学を専門とする埼玉大学・髙橋哲准教授が、最新『法学セミナー2019年6月号』に「教職員の多忙化をめぐる法的問題」として論文を提出されています。 今回は、この論文のなかでも、「限定(超勤)4項目外業務」における解釈について、これまでの歴史と今後の取り扱いについて書かれた箇所を取り上げ、考えていきたいと思います。 ◆「限定4項目外業務」の解釈の変化 髙橋哲准教授はこの論文のなかで、「限定4項目外業務」について、 4週間単位変形労働時間制⇒教員の自発的行為⇒包括解釈 というようにその解釈の仕方が変わってきたことを指摘しています。 包括解釈は、給特法制定時の「施行通達」(昭46/7/9文初財第377号)にはみられない。「勤務時間の割振りを適正に行うためには、労働基準法第三十二条第二項の規定の活用について考慮すること」とし、旧労基法32条2項に定められていた「4週間単位変形労働時間制」を活用す
以前、私は過労死された学校教員の新聞記事を集めたことがあります。 過労死教員は1970代から断続的にいた―過労死された先生方の新聞記事を集めた― このなかに2007年に横浜市の中学校教員だった工藤義男先生がいます。 2012年12月27日神奈川新聞 『中学教諭の過労死認定 地公災審査請求「二審」で全面逆転』 pic.twitter.com/R2s9QolGpA — 東和誠@2分の1成人式やめた人 (@makoto_touwa) 2019年1月24日 今回取り上げる、朝日新聞の牧内昇平記者『過労死―その仕事、命より大切ですか―』という本の第4章では、この工藤先生の残されたご遺族の方々がどのような気持ちでその後の人生を歩んでいるのかについて、取材された記録が書かれています。 ◆過労死された工藤義男先生 横浜市の中学校で体育を教えたいた工藤義男先生。2007年6月、くも膜下出血で倒れ、かえらぬ人
※拡散希望 次回裁判、5月17日(金)10:30より、さいたま地裁C105法廷で行われます。 終了後には、報告会を予定しています。応援に来ていただけると、とてもありがたいです。 よろしくお願いいたします。 pic.twitter.com/bEpjwIN154 — 埼玉無賃残業訴訟・田中まさおのサイト (@trialsaitama) 2019年4月28日 昨年12月に始まった、埼玉県小学校・田中まさお教諭による超勤訴訟。 第1回裁判が昨年12月に、第2回裁判が今年2月に行われました。 来週、その第3回裁判が行われますので、今回はここまでの双方の主な主張について、争点ごとに突き合わせて整理しましたので、振り返りにご活用ください。 ◆訴状
今回は私が小学校教員時代、職員会議で校長に却下された3つの提案を書きます。 1.休憩時間に会議、やめてください! 私と校長のやり取りは次の通りです。 私「本当はおかしいですが会議が伸びて休憩時間に差し込んじゃいました、100歩譲ってこれならまだ仕方ないと思います、でも最初から計画として休憩時間に会議が組み込まれているのは本当におかしいと思います。労働基準法はできたら守ろうというものではなく、絶対に守らなくてはならないものです。休憩時間に会議を入れるのはやめてください」 校長「おっしゃる通りだと思います。とはいえ、会議を行う時間が他にありません。可能限り休憩時間に入れないよう努力しましょう」 職員会議は校長の諮問機関でしかないので決定権は校長にしかありません。 つまり、却下! ということです。 職員室では労働基準法は努力義務であった模様です。(おかしいだろ!) 勤務時間内に仕事を収めるのが管
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