初期ル=グィンの自選短篇集。原題は「THE WIND'S TWELVE QUARTERS」だが、これを『風の十二方位』とする辺り、うまいなと思う。恐らく名前を知らない作家であっても、この書名なら手に取ってみたくなる――そんな気にさせる本といえる。最近は特にビジネス書なんかだと、書名もそのものずばり(かつ少し冗長というか長いタイトル)のものが多いという印象がある。そういう本の方が掴みとしてはよいのかもしれないが、個人的には映画のタイトルをそのままカタカナに置き換えておしまいなのと一緒で、物足りなさを感じるのも事実である。 だから、実をいうとこの本はタイトルだけで割と満足してしまった本であり、タイトルだけから勝手に連想していた時間の方が読書そのものよりおもしろいというような印象だった。その意味では少し変わった読書ともいえるが、そういう契機を与えてくれたという点では、訳者を含め著者の底力というべ