「(二〇〇五年)十二月十三日、ジブリから正式発表があります」。用事のついでにFAXでそう知らせてくれたのは、岩波書店、児童書編集部のWさんだった。中味が「ゲド戦記」の映画化の話であるのはわかっていた。宮崎駿さんではなく息子さんの吾朗さんが手がけることになりそうなこともわかっていた。が、わかっていたのはそこまでだった。正式発表というからにはいよいよ映画化に向けて動き出すのだとは思ったが、あの六巻にわたるアースシーの世界をアニメーション映画でどう扱うのか、その辺はまったく予想もついてはいなかった。 発表の翌日の新聞で、四巻も視野に入れつつ、第三巻『さいはての島へ』を中心にすえると知ったとき、私は「ああ、大丈夫」と思った。「きっと初々しい、いい作品になる」。 宮崎吾朗さんに初めて会ったのは二〇〇五年四月下旬のある日のことだった。約束のホテルのコーヒー・ラウンジで吾朗さんとジブリのスタッフおふたり
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