50年生まれ。フォーク歌手、詩人。アルバム「ぼくの田舎」発売中。年内にナナロク社から詩集を刊行予定。=麻生健撮影 ■孤へ帰り、意味を見つける 『黒田三郎詩集』 [著]黒田三郎 (思潮社・1258円) 初めて手にとったのは、デビューした1972年ごろ。この詩集には、日常に疲れた男が出てきます。当時の僕は若い人が好きじゃなくて、早くおじいさんになりたい、人生に疲れてみたい、という憧れがあった。読み進めるうちに、自分が歩いている道や乗っている電車、喫茶店の椅子なんかが、とても意味あるものに思えてきたのを覚えています。 学生運動が盛んだったころ、大学は解放区のようでした。バリケードのなかに泊まった帰り、おみやげにもらった火炎瓶を、誰もいない道ばたに投げてみたりもした。何かが変わるかもしれないという予感があったけれど、70年代に入って、結局何も変わりそうにないことがわかった。世の中に敗北感が漂ってい