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2010年6月23日のブックマーク (2件)

  • 海苔と部長の禿げ隠し - Everything You’ve Ever Dreamed

    蒸し暑い昼間。取引先での打ち合わせを終えて蕎麦屋にはいり、お品書きに粋な調子でさっと目を通し、手を挙げ、時給780円おばはんにもりそばを頼もうとしたそのとき、打ち合わせ中は、あっ!とか、う〜っとか、おぅ…しか言わず存在感がなかった部長の声がした。「俺はざるだ…」。文章話せるんだ部長…と感心しながらもりそばを注文。そばを待つ間、部長はつぶやき続けた。目は虚ろだった。「俺たち営業マンは会社の看板を背負っている。白い歯をみせたら客になめられる…ビジネスは殺るか殺られるかの厳しい世界だ…」永遠に続きそうな言葉の数珠は、おばはんのお待たせしましたの声で途切れた。 テーブルにざるそばともりそば。部長は中空を睨んだまま電池切れのように凝固していた。人の目が気になるし、気色が悪いので「部長…」と声をかけた。「ざるそばにあってもりそばにないもの…それはなんだ?」と部長は言った。狂ったか。「の、ノリです…」「

    海苔と部長の禿げ隠し - Everything You’ve Ever Dreamed
    masakooo123
    masakooo123 2010/06/23
    部長はミリオンセラーを使っていたのかしら
  • 午後七時、僕の部屋に明かりが灯る - Everything You’ve Ever Dreamed

    漁師だった母方の祖父は小柄なくせにとにかく腕っぷしが強くて中学を卒業するまで僕は腕相撲でまったく敵わなかった。もっとも、漁師だったのは僕が産まれるずっと前のことで、陸にあがったあとは普通に会社勤めをしていたし、人もあまり思い出したくないのか、漁師時代のことにはほとんど触れようとしないので、ときどき母親と叔父の会話から垣間見える程度で、祖父の漁師時代のことを僕はよく知らない。小学生のころ、夕暮れどきに一緒に海岸を散歩していた祖父が灯台をみつめて、ただひとこと、「あの灯りを頼りに」とぼそっと呟いたのを聞いたことがある。そのときの祖父の眼は、夜の海と同じ色をしていた。中学、高校と進んでいくにつれ、腕っぷし自慢の祖父が僕や弟に腕相撲を仕掛けてくることはなくなっていった。 腕っ節が強いイメージが刷り込みのように焼きついてしまっているので、祖父が最近ちょっとおかしい、忘れっぽくなったと親戚から聞かさ

    午後七時、僕の部屋に明かりが灯る - Everything You’ve Ever Dreamed