序章 はじめに LISPは冗談に「計算機を誤用するための最も賢い方法」であるといわれてきた.この描写は大変な賛辞であると私は思う.この言葉によって LISPの持つ完全に自由な雰囲気が伝わってくるからである.――― LISPは,我々の最も才能のある人々が,以前は不可能であった試行を行う手助けをしてきたのである. ハッカーにとって,簡潔さより大事なことがある.自分のやりたいことがやれることだ.プログラミング言語の歴史をふりかえってみると,「正しくない」と考えられる行いをプログラマがするのを防ぐために驚くべき程の努力が払われて来た.これは危険なほどにおこがましい計画である.プログラマが必要とするであろうことを,どうやって言語設計者はあらかじめ知ることが出来ると言うのだ? 言語設計者は,ユーザを自分のミスから守ってやらなきゃならないようなまぬけではなく,設計者が考えもしなかったようなことを実現で