脳の発達障害としての統合失調症 東京医科歯科大学大学院精神行動医科学分野 西川 徹 はじめに 統合失調症では、遺伝的要因や胎生期や周産期の環境的要因によって、神経細胞や神経回路網 の発達障害が引き起こされ、多彩な症状の基盤となる情報処理障害が生ずる可能性が注目されて いる。すなわち、疫学的研究において、胎生期、周産期または生後発達期の栄養障害、薬物使用、 ウィルス感染、放射線障害、神経発生過程の障害などと統合失調症の関連性が疑われている。ま た、統合失調症患者の死後脳では、(1)海馬や内嗅領皮質にグリオーシスを伴わない細胞構築の異 常が見られ、(2)bcl-2、GSK3β、Reelin、NCAM、Oct-6、BDNF、EGF、GAP43、Netrin-G1 and -G2、 髄鞘化関連遺伝子などの神経発達に関与する遺伝子あるいは蛋白の変化が報告されている。 こうした神経発達障害仮説に