去る3月16日に、東急東横線がみなとみらい線・東京メトロ副都心線・西武池袋線・東武東上線とのあいだで相互直通運転を開始し、同時に東横線のターミナルである渋谷駅が地下化されてから一カ月が経った。 東急東横線は渋谷と横浜とを結ぶ、東京急行電鉄の主要路線だ。 沿線の日吉(横浜市港北区)には、慶應義塾大学の日吉キャンパスや慶應義塾高校がある。その発端は、昭和初年に、東急の前身である東京横浜電鉄が慶應義塾に対して、日吉台の7万2千坪あまりの土地を無償提供すると申し出たことにさかのぼる。通学客をあてこんだものとはいえ無償とは、電鉄側にはよっぽど勝算があったのだろう。 かように東急、とりわけ東横線と慶應の関係は深い。慶應義塾の機関誌『三田評論』の4月号は、今回の東横線と他社路線との直通運転開始を受けて「東横線と慶應」という特集を組んだ。その冒頭には「思い出は東横線とともに」と題する座談会を収録、泉麻人(