どんな達人にも無力の駆け出し時代がある。多様なキャラクターを変幻自在に演じ、三谷幸喜、是枝裕和ら人気演出家から指名を受ける女優斉藤由貴(54)にも、未熟さに悩み、泣くばかりの日々があった。ニッカンスポーツ・コムの取材に応じ、85年の映画デビュー作「雪の断章-情熱-」(相米慎二監督)の撮影当時や、風変わりだった思春期のエピソード、さらには独特の人生観も語った。全3回。【取材=松田秀彦、島根純】 ◆ ◆ ◆ 「雪の断章-情熱-」撮影中、突き放すような態度を続けていた相米監督が、撮影終盤のある時、ふと声を掛けてきた。意外な言葉だった。「おまえは、芝居に余計なものをくっつけていて、本当にダメなやつだと思うけど、いい女優だとは思うから、10年後か20年後か分からないけど、また仕事を一緒にやれたらいいよな」。 予想もしない言葉に、まともに返事ができなかった。 「この人は急に何を言っているんだって。そん