それは白昼夢だった。 旦那と楽しく語らいながら自転車を走らせていると、突然、傍らにそいつがやってきた。 「死神です」 と丁寧にお辞儀をする。 旦那は気がついていない。 私はすぐに、頭の中の妄想が始まったのだと思った。なぜなら、私は旦那と全く違う話で盛り上がっているのだから。 「確かに、クリスマスに食べたローストポークは美味しかったね」 と旦那に答えつつ、(おいおい、私、大丈夫か?)と軽く頭を振った。死神と名乗る奴は気にする風でもなく、勝手に話を進めていく。 「私のことは誰にも話せません。また、あなたをいつ連れて行くのかもお教えできません。やり残したことはございませんか?」 と言い終わると、静かな笑みを称えているばかりだった。 少しこの妄想に腹が立ったので、旦那に話して終わらせてやろうと思った。 「世間じゃチキンなんだけどな。さすがに食べすぎたから、正月に肉はいらないな」 と旦那はまだロース