簡単な労働力の生産費を総計すれば、労働者の生存=および繁殖費となる。この生存=および繁殖費の価格は労賃を形成する。こうして決定される労賃は労賃の最低限と呼ばれる。この労賃の最低限は、生産費一般による商品の価格決定と同じように、個々の個人にではなく、〔労働者〕種族に当てはまる。個々の労働者は、幾百万の労働者は、生存繁殖しうるだけを受け取っていない。だが全労働者階級の労賃は、その変動の内部においてこの最低限に一致する。 ――カール・マルクス『賃労働と資本』より いまの時代、マルクスを取り上げると、どうしようもない時代錯誤者か、あるいは歴史から学ばない愚か者とされるのがオチなのだろう。しかしながら、マルクスを切り捨てた私たち「資本主義社会人」は、実際のところ、マルクスが提示した問題を何一つとして解決していない。解決していた、乗り越えていた、と思っていたのは、資本主義が思いのほか人々に「豊かさ」を