本を編集、執筆していると、常に後悔がつきまとい、一度として納得のできるものをつくれたためしがないのだが、その後悔を長く引きずることもあれば、しばらくするときれいさっぱり忘れてしまうこともある。しかし富山のながましについては、以前出版した『地元菓子』に写真を掲載できなかったという後悔に長い間苛まれていた。 手前味噌で恐縮だが、『地元菓子』には「もちのまち」という項目があり、富山と新潟の餅について書いている。富山は米作が盛んで餅も豊富な地域で、市内を歩いているだけでも数軒の餅店に出会い、さまざまな種類の餅を買うことができる。笹餅、豆餅、昆布餅、くるみ餅……お菓子というよりは日常的なおやつ、いや食といったほうが適切な気もするが、ながましというのは、それらの餅のひとつである。お隣新潟も餅文化だが、笹団子という全国に名の知れた名物餅があるだけに、その陰で富山の人たちはひっそりと自分たちの餅文化を楽し