社会の風潮撃つ視点 いわば“伝説の書”の復刊といっていいだろう。本書は、1979年に刊行(JCA出版)されたものの、その後、絶版となり図書館でもなかなか手にすることができなかった。 著者は脳性まひの重度障害者(一昨年死去)で、ドキリとするタイトルは、当時続発していた家族による「障害者殺し」を踏まえたものだ。 例えば1970年、横浜市で2人の障害児を育てていた母親が、下の娘をエプロンのひもで絞め殺すという事件が起こった。しかし事件後、母親に多くの同情が集まることとなる。母親を殺害に追い込んだのは、何より日本の福祉政策の貧困であり、母親もまた被害者であると、町内会や障害児をもつ親の会を中心に、加害者である母親の「減刑」を嘆願する運動が開始されたのである。 こうした動きに異を唱えたのが、著者らを中心とする障害者団体「青い芝の会」だった。殺した母親がかわいそうというなら、殺された子はどうなるのか。