もし、あの偉人が生きていたならば――。 歴史人物についての本をたくさん書いてきたので、そんな想像を巡らせることが少なくない。なかには「絶対に自分とは合わないだろうな」と思う人物もいる。新選組の副長、土方歳三はその一人だ。 その理由は、ズバリ「怖いから」。そもそも新選組というだけで恐ろしい。なにしろ、血気盛んな幕末の志士たちを取り締まるために結成された、選りすぐりの剣士たちである。 坂本龍馬なんて京都でばったり新選組に会ったときに、妻を置いて逃げているほどだ。妻のおりょう自身が後年に語っていることなので、本当なのだろう。あとで妻に怒られると、龍馬は「奴らに引っかかると、どうせ刀を抜かないわけにはいかないから、それが面倒で隠れたのだ」と弁解したらしい。絶対に言い訳だと思う……。 しかも新選組は、たとえ身内でも容赦することはない。結成から鳥羽伏見の戦いの直前までの5年間で、新選組の隊士は45人が